説明
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「捏ねることも、丸めることも、私の手の細胞と合体させることだ。丸くなったら発酵の番だ。これも私流なのだ。祖母の形見の、石でできたブレッド・スタンプを押す。最後に祖母が織ったタオルを上にかけて待つ。このレシピは自分で考えて、いちばんこの家に合うことがわかった。同じ場所に長く住むと、湿度と景色、光の落ち方によって生きているイーストの状態がわかってくる。私にとって、これにはもう一つの意味がある。パンを通して自分の祖先の身体をもう一度形にして食べることを繰り返し、私の身体に戻すのだ。」(169頁)
2020年冬、弘前。著者は雪かきを終えたあとにパンを作る。混ぜて捏ねて発酵させる一連の作業の中に、見るもの感じるもの、そこにあるものないもの、時間や記憶、生きてきたすべてが存在し、やがてひとつのパンになる。
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出版社 : 亜紀書房
発売日 : 2022/7/21
言語 : 日本語
単行本(ソフトカバー) : 256ページ
ISBN-10 : 4750517518
ISBN-13 : 978-4750517513