優しい地獄 / イリナ・グリゴレ (著)(亜紀書房)

¥1,980

『雪国』を読んだ時「これだ」と思った。
私がしゃべりたい言葉はこれだ。
何か、何千年も探していたものを見つけた気がする。
自分の身体に合う言葉を。

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社会主義政権下のルーマニアに生まれたイリナ。
祖父母との村での暮らしは民話の世界そのもので、町では父母が労働者として暮らす。

川端康成『雪国』や中村勘三郎の歌舞伎などに魅せられ、留学生として来日。
いまは人類学者として、弘前に暮らす。

日々の暮らし、子どもの頃の出来事、映画の断片、詩、アート、人類学……。
時間や場所、記憶や夢を行ったり来たりしながらつづる自伝的なエッセイ。

《本書は、社会にうまく適応できない孤独な少女の記録であり、社会主義から資本主義へ移っていくルーマニアの家族三代にわたる現代史でもある》

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五歳の娘は寝る前にダンテ『神曲』の地獄の話を聞いてこう言った。
「でも、今は優しい地獄もある、好きなものを買えるし好きなものも食べられる」。
彼女が資本主義の皮肉を五歳という年齢で口にしたことにびっくりした。
——本文より

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商品コード: 978-4750517513 カテゴリー: , , , タグ:

説明

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「捏ねることも、丸めることも、私の手の細胞と合体させることだ。丸くなったら発酵の番だ。これも私流なのだ。祖母の形見の、石でできたブレッド・スタンプを押す。最後に祖母が織ったタオルを上にかけて待つ。このレシピは自分で考えて、いちばんこの家に合うことがわかった。同じ場所に長く住むと、湿度と景色、光の落ち方によって生きているイーストの状態がわかってくる。私にとって、これにはもう一つの意味がある。パンを通して自分の祖先の身体をもう一度形にして食べることを繰り返し、私の身体に戻すのだ。」(169頁)

2020年冬、弘前。著者は雪かきを終えたあとにパンを作る。混ぜて捏ねて発酵させる一連の作業の中に、見るもの感じるもの、そこにあるものないもの、時間や記憶、生きてきたすべてが存在し、やがてひとつのパンになる。

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出版社 ‏ : ‎ 亜紀書房
発売日 ‏ : ‎ 2022/7/21
言語 ‏ : ‎ 日本語
単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎ 256ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4750517518
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4750517513


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