説明
訳者あとがきより
マッカラーズの小説世界は、言うなれば個人的に閉じた世界でもある。それはマッカラーズによって語られ、描写されるマッカラーズ自身の心象世界だ。そこに出てくる人々は、それぞれの異様性を背負い、それぞれの痛みに耐え、欠点や欠落を抱えつつ、それぞれの出口を懸命に探し求めている。
しかし多くの場合、その出口は見当たらない。そしてその「出口のなさ」にこそ、実はマッカラーズの小説作品の真骨頂みたいなものがある。その世界における夜は暗くて長い。とはいえ夜はもちろんいつか明けて、朝が訪れる。しかし朝は来ても、そこで明確な解決策が示されるわけではない。人々はそのような宙ぶらりんの状態に置かれたまま、新たな夜の到来を待つことになる。僅かな――しかしきらりと小さく光る――希望を持って。
出版社 : 新潮社; 文庫版
発売日 : 2023/9/28
言語 : 日本語
文庫 : 608ページ
ISBN-10 : 4102042032
ISBN-13 : 978-4102042038