今日から今年の営業開始です。
大山崎町の小さな本屋、Puolukka Millです。本年もどうぞよろしくお願い致します。
昨年は本屋であるがゆえに、情報量に押し流され、どことなく「本」との距離が離れていたような気がしています。
今年は一冊づつ「読む」「書く」「話す」をしっかりやっていきたいなと。
で、いきなり今年じゃない話からスタート。昨年読んで面白かった小説(エッセイ含む)10選です。
読んだだけなので、昨年出版された本でないものが含まれます。また番号に意味はありません。
では、はりきっていきます。
1、「別れを告げない」 / ハン・ガン
もうハン・ガンで10冊選べば?(10冊ないか)という気持ちになりかねないハン・ガンさんイヤーでした。
ノーベル賞の知らせは本当に嬉しかった。世界が少しはましな場所に思えたものです。
「別れを告げない」は済洲島4・3事件を題材にした小説、私小説、ノンフィクション、ファンタジー、あるいはSFとも読み込める素晴らしい小説でした。内容的には、ひょっとしたら生涯ベストに上げる人がいるのではないかと思います。
2、恐るべき緑 / ベンハミン・ラバトゥッツ
昨年もっともびっくりした本。かつての科学者たちを題材にした「見てきた」かのようなフィクション。歴史的な発見に立ちあったり、伝説的な人々の「おそらく」がたっぷり描写されています。傑作ですよ。
3、この村にとどまる / マルコ・バルツァーノ
ダムの底に村がまるごと沈んでいるのが発見された実話をもとに、時々の権力者に翻弄されていくある村の人々の話。わかる、わかるよ。理不尽な開発ってこんな感じなんだよ。今も残る鐘楼が表紙になっています。
あまりに美しいので観光地になっているそうです。
4、スイマーズ / ジュリー・オオツカ
自分にとって特別な作家な気がするジュリー・オオツカの作品。
とあるスイミングクラブと痴呆の女性の話。これまでの戦時の日系人の話から一転して現代ものです。
10年に1作しか書けないと言う言葉通り。まだ3作しか出ていません。
10年1作でもいいので、長生きしてほしいです。
5、灯台へ / ヴァージニア・ウルフ
ついに克服したヴァージニア・ウルフ苦手意識。まじすごいというのが素朴な感想です。
意識の流れっていうんですかね。読みにくいんですが、抵抗せずにのっかってしまえば、どうってことはなかったです。
6、わたしを空腹にしないほうがいい / くどうれいん
二年連続ノミネート!彼女の食エッセイの中では今の所これが一番好きだと思います。若い頃の揺らぎみたいなのが存分に感じられます。「あとがき」がめっちゃ好き。
7、ここから世界が始まる / トルーマン・カポーティ
村上氏がたびたびカポーティの凄さを語っているのを読んで、それなりに読んで好きだった(特にティファニーで朝食を)ものの、今一つつかみきれないままだった。が、カポーティらしさというのがこの初期短編集で把握でできます。
既に「小説の肝」みたいなものを表現できるレベルにあり、確かに天才であるということがよくわかります。
特に泣けはしないけれども、感心しました。
8、地球の中心までトンネルを掘る / ケヴィン・ウィルソン
昨年のビックリしたその2です。地球の中心まで穴を掘ったらどうなるの?は子供の質問ですが、それを地でいってます。でもSFではないです。変わった設定の話が多く、どんどん境界(物語が崩壊する箇所)へ行き、ぎりぎりで踏みとどまります。その踏みとどまり方に、作者の個性が良く出ていると思います。
9、優しい暴力の時代 / チョン・イヒョン
韓国の作家の実力を知りたい方はこちら。ハン・ガンさんだけじゃないよ。今、生きている時代をうまく言い表しているのではないかと。
10、十七回目の世界 / 折小野 和広
読んだリストに入れてしまってますが、まぁいいですよね。ちゃんと芯を食った感触があり、この小説の行方はそんなに心配していません。
年末に読んだよと言ってくれる方もあり、(わざわざ感想を来てくださった方も(泣))嬉しい限りです。
絶賛発売中なのでよければどうぞ。
以上、昨年読んだ10冊でした。
今年も良い本がたくさん読めますように。