説明
訳者あとがきより
どちらも、「物語」ということが核になっていて、『写字室の旅』では、部屋に入れ替わり入ってくる人間たちはかつてその老人が物語の登場人物として世界に送り出した人物である(要するに、老人が作者で、入ってくる人たちは老人が創造した人物)らしいのに対して、『闇の中の男』において不眠に苛まれる老人が夜ごと考える物語は、どこか別の世界で現実に起きている出来事にほかならない。そのあたりも対照的であるような、しかし内的世界と外的世界の関係が錯綜しているという意味では共通しているような、単純には決めがたいつながりがある。が、今回こうして一巻本にまとめたゲラを通読してみて、とにかくこの二作が「合体」して新しい第三の作品が生まれたことで、1+1以上の豊かさが生じている、ということは強く実感した。ぜひこの版で、二〇〇〇年代後半のオースター文学の主たる成果に触れていただければと思う。
出版社 : 新潮社
発売日 : 2022/8/29
言語 : 日本語
文庫 : 448ページ
ISBN-10 : 4102451188
ISBN-13 : 978-4102451182